精霊の守り人

女用心棒バルサは、偶然助けた皇子チャグムの母から、チャグム皇子を連れて逃げることを依頼される。
チャグムの命を狙うのは、父である皇帝の配下。
そして、チャグムの体の中に宿ったモノも、チャグムの命を脅かす。
バルサは皇帝の追っ手を避けながら、チャグムの体に宿ったモノの正体を見極める旅に出た。
 
新ヨゴ皇国という舞台設定がまず素敵。
外国からきた支配者であるヨゴ人、原住民族ヤクーとその伝承、ナユグという目に見えないもう一つの精霊の世界。
アジア的な名称や泥臭い精霊たちの容姿は、まさにアニミズム
 
登場人物たちも魅力的だ。
バルサが命がけでチャグムを守るうちに、自分自身を育て守ってくれた師匠ジグロの生き方を重ね合わせるオトナの苦悩と解放も、少年少女向けファンタジーとは異なる。
賢者の名にふさわしい宮殿の博士と、意地汚い妖怪みたいな賢者のばあさんトロガイの対照的な言動も面白い。
少年であるチャグムや、20歳の宮殿の若きエリート・シュガも、なんだか年寄りくさいので、初々しさのない小説なんだけど、児童書ということで、変な悪者は出てこず、見方も敵も、皆、まっとうな精神構造の持ち主なのも清清しい。
(ちょっと帝だけが怪しいが、そもそも、彼は人間扱いされていない)

精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)